赤とんぼ 第7号 CONTENTS


2003年1月発行


 

◆インタビュー「この人と」

技術者として生きるとは—棚町知彌さんに聞く

高専教育に賭ける夢 —世界的な高等教育変革の中で、高専をいかに位置づけるのか

 

〈高専制度が発足して40年を過ぎた。この間に社会に巣立った卒業生は40万人近くになる。第1期生は50代半ばになり、それぞれの人生を振り返る時期を迎えている。若き日、高専という新しい学びの場で過ごしたことを卒業生たちはどのように思い返しているのだろうか。草創期の高専には、どのような夢と理想があったのか、有明高専(福岡県大牟田市)の元教官(国語、技術者教育)、棚町知彌さんに聞いた。工業高校、高専、そして技術科学大学創設の現場を歩まれたうえでの問題提起の数々は、現在の技術者教育のあり方について多くの示唆を与えてくれる。〉

 

・教養教育の可能性に賭けて

・世界的な高等教育変革の中で

・〈普商工農〉の風に立ち向かう

・技術科学大学の理想と現実

 

【インタビューを終えて—池田知隆 有明高専電気工学科2期、毎日新聞論説委員】

「彼女は女性であった。彼女は被圧迫国民のひとりであった」。ラジウムを発見した物理学者、キュリー夫人の娘による「キュリー夫人伝」の冒頭の一節だ。国語の時間はその朗読から始まったのだ。
細い体に、怒り肩。鋭い眼光。授業中、朗々と本を読み、まさに名調子。そして試験といえば、読書感想文を書くこと。その国語教育の総仕上げは、「チボー家の人々」を読み通すことだった。
『チボー家』のクライマックス、「一九一四年夏」の章にこんなシーンがある。
「いいかね、ジェニー。今日から戦争を認めるか、認めないか、それによって人間を分類しなければ……」。主人公、チボー家のジャックは兵役命令が出た夜、恋人ジェニーに言う。「祖国」と「正義」のもとで戦争にかりだされる若者たち。ジャックは、「戦争反対」「停戦」を呼びかけるビラを飛行機からまき、墜落し、負傷した。そして口がきけないまま、ドイツ軍のスパイとして射殺された。
日本の周辺でも今、「戦争」と「国家」の問題がにわかに浮上している。棚町さんの総会における特別講義にも、その国語教育への熱い思いが込められていた。
棚町さんについては、「赤とんぼ」前号や拙著「新聞記者」(実業之日本社)の中で、上記のように紹介している。特別講義やその後のインタビューを通して、40年前、棚町さんが高専に賭けた熱気を改めて思い返している。だが、その芯にあるものは少しも変わっていないことに気づかされる。
私は5年前から「図書館を使った”調べる”学習賞コンクール」(図書館の学校主催)の審査委員をしており、いつしか図書館の世界とのかかわりが深くなっている。尾上編集長に「図書館とのかかわりも棚町さんの影響ですか」と言われて初めて気づいたのだが、そうなんだろうなと思う。
棚町さんは、中島みゆきのヒット曲「地上の星」がお気に入りだとうかがった。高専から技術科学大学づくりにかけた夢は、棚町さんの「プロジェクトX」だったのだろう。それの思いは果たして実を結んだのだろうか。
高専教育をめぐって第2期の検討が始まる可能性はあるにしても、草創期の当事者の証言を得る機会はなかなかない。そのため当初予定した分量を大幅に上回るロングインタビューになってしまったが、貴重な資料として後世の役に立てれば幸いです。
今、棚町さんの志をどのように受けとめていけばいいのか、HNKの皆さんにも考えていただきたい。

 

◆棚町講義に寄せて

・タナマチ先生と私/川崎義則(有明高専  昭和38年入学 有明高専  機械工学科教授) 
・棚町式授業の思い出…萩尾坂の学舎にて/染田寿稔(有明高専  建築学科  昭和47年入学)

・棚町式授業の思い出…長岡技術科学大学編/宮下孝洋(幾徳高専工業化学科9期・長岡技術科学大学1期)

・棚町先生最終講義「私の遺言状」/大成博文  徳山工業高等専門学校教授・日本高専学会副会長

 


HNK第6回定時総会での棚町知彌先生の特別講義(2002年)の模様が録画されています。

HNK 第6回定時総会  特別講義 録画

棚町知彌「図書掛教師の45年—高専への遺言状—」DVD(87分)

2002年7月13日 於はあといん乃木坂

www.sogogakushu.gr.jp/kosen/video_tanamachi_1.htm

 

価格5,000円(税込) ※別途送料・代引手数料が必要です。

 

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